経営会議では、退職し担当社員がどのような仕事をしていたのか、その具体的な内容についても改めて見直した。
結果として分かったことは、
大きく言ってこの3点だった。
担当以外が経理に疎い会社にありがちな、最も恐れていた事態である不正の痕跡は見当たらなかった。思えば、彼は真面目な男だったのだ。家業を継がなければならなくなったのも、彼の兄が家業を拒否したからと聞いている。多少なりとも疑ってしまった自分を恥じた。
真面目な男が真面目につけていた会計ソフトの帳簿は、彼以外の人間が見てもよく分からないものとなっていた。帳簿の体裁をした帳簿らしきものではあったが、これを元に何らかの経営改善案が導き出せる性質はまったくない。
データに基づいて現状を分析し、将来の改善に役立てる。そういった視点がすっぽり抜けていたのだ。資金繰りの計画や経営計画を立てるにあたって、過去のデータ、つまり決算書は重要な意味を持つ。これは彼の仕事を洗い出しているうちに我々経営陣も気づいた点であって、彼の落ち度というわけではないが、ただ入力と整理をしているだけなら、確かに人件費の無駄と言っても過言ではない。
経営会議における結論は、「会社の将来の経営計画を立てていくには正確で活用できる経理データが必要であり、そのためにプロに委託する必要がある」ということだった。